北大輝「明日への戦い」

日本社会への提言

東京五輪は絶対失敗する

 東京五輪を開催するか中止するか、ということは、海外のブックメーカー(賭け屋)の賭けの対象になってもおかしくない段階に入った。菅政権や自民党は何が何でも開催の構えだが、結論を言いたい。

 東京五輪はどんな形にせよ、大失敗する。

 開催を強行すれば、国、東京都、組織委員会IOCが想像もつかなかったようなトラブルが続発し、良ければ準備段階、最悪の場合、大会期間中に中止に追い込まれるはずだ。中止したとしても、多大な債務と後遺症が残される。失敗する要因を一つ一つ検討していきたい。

 失敗の要因には、①緊急事態宣言解除後の患者の急増 ②変異型ウイルスによる感染拡大と医療崩壊 ③大会関係者による感染拡大あるいはクラスターの発生 ④小池百合子知事の動向 ⑤大会運営の行き詰まり などが挙げられよう。

 ①であるが、まず緊急事態宣言は6月20日にいったん解除せざるを得ないだろう。政府は4月25日に3回目の緊急事態宣言を発令した後、「5月11日まで」「5月31日まで」「6月20日まで」となし崩し的に期限を延長してきた。酒類の販売を禁じ、夜間外出の自粛を求めても、感染者数の減り方が鈍かったためだが、菅首相は延長日数の具体的な根拠も示ささなかった。五輪開催を念頭に、延長日数を「目分量」で決めてきた責任も取らない。

 まん延防止策は続けるようだが、飲食店以外にも、肉、魚、野菜、酒、氷などを卸す業者や従業員の生活を考えると、酒類提供禁止をこれ以上続けるのは限界だし、延長しても、国や自治体の要請を無視して、営業を再開する店が増えるだけだ。

 東京では6月12日、1か月ぶりに前週の感染者数を上回り、お上お得意の「人流」抑制がすでに失敗しているが、宣言が解除されれば、皆、真っ先に居酒屋やカフェに殺到することだろう。PCR検査を抑制したままの状態では、感染の実態を把握できず、陽性者(無症状者を含む)の隔離もできないので、感染者の急増は防げない。それに比例して、重症者、死者も増える。昨年の段階から、「検査を減らすと、重症者、死者が増える」という指摘がされてきたが、これまでの国内の経緯はそれを裏付けている。

 ここに、②の変異型ウイルスが感染に拍車をかける。東京ではすでに感染力が従来の1・78倍で、ワクチン効果を減衰させる上、再感染の可能性もある「デルタ株」が約3割に達している。6月20日に緊急事態宣言が解除されれば、7月23日の東京五輪開幕までに、患者急増の「第5波」が来る可能性は高い。

 この「第5波」が五輪・パラリンピックと重なれば、大会要員の医療従事者が医療機関から引き抜かれるので、感染者の手当ては後手に回る。ギリギリで回してきた東京の医療も「第4波」の大阪のように、崩壊するだろう。

 ③だが、現在、すでに多くの大会・メディア関係者の入国が始まっている。IOCが配信するインターネット放送「オリンピック・チャンネル」もある。国会でも取り上げられたが、オリンピック放送機構のインド人スタッフが自由に外出し、歌舞伎町にも繰り出していると指摘されている。大会関係者や報道関係者は最低4日間の隔離で入国できるし、特別な申請を出せば、即日入国できる。彼らは日本人ほど遵法意識は高くないし、「必要な作業」「取材活動」などの名目で、あちこち自由に飛び回るだろう。日本を見下している外国人の報道関係者が外出自粛要請などに従うものか。

 コロナは、症状がないのに、ウイルスを保有する「無症状感染者」が特徴だ。世界中から人が集まれば、世界中の多種多様なウイルスが一堂に会して、「日本型」変異ウイルスが生まれるかもしれないし、大会関係者が宿泊するホテルや会場、プレスセンターなどでクラスターが発生するかもしれない。

 菅政権は、今まで日本で実施したこともない選手や競技関係者など、1日数万人のPCR検査をどうやって実施するつもりなのだろうか? 多分、中抜き込みで破格の謝礼を払って民間検査会社に委託するほか、文科省がコロナ医療での実施を禁止してきた国公立大のPCR検査器もフル活動するつもりだろう。だが、もしそうなった場合、コロナ発生の昨年初頭から今までの間、検査を満足に受けられず、医療が手遅れになって死んだ人は浮かばれないだろう。「日本人の生命より五輪が大事」という安倍、菅自民党政権の冷酷さを如実に表わすものになるからだ。

 世界から集まる何万人もの選手らの間から発生するコロナウイルスは、何万人ものボランティアや延べ300万人とも言われる観客に感染しかねない。これまで、サッカーやテニスの世界的大会は何度も開かれてきたが、必ずコロナ感染者が発生している。菅政権は選手村でクラスターが発生したら、「大会中止で政権が崩壊しかねない」と恐れているようだが、その懸念が実現する可能性は高いと言ってもいいだろう。それ以上に、ボランティアが持ち帰ったウイルスで全国で医療崩壊を起こすほどの「第5波」「第6波」が起こりかねない。

 ④の小池知事の動向も見逃せない。今の所、五輪の真の主催者・米NBCが五輪放映をやる気であり、IOCも開催に向けて強硬姿勢なので、自分が責任を取らされないように五輪に関する発言を控えたまま、粛々と準備を進めているようである。女子アナ上がりで目立ちたがりの知事であるから、東京五輪の閉会式で旗を振り、世界中にアピールしたいのだろう。五輪に対する姿勢を曖昧にしたまま、都議選に突入し、小池ブームで勝ち上がってきただけの都民ファーストの都議が死屍累々となっても、後は野となれ山となれ、都議選の約20日後に五輪は開催されるので、映像記録や歴史に名を残すことはできる。逆に「都民ファースト惨敗の責任を取る」と言って、知事を辞め、秋の総選挙で念願の国政返り咲きに利用するかもしれない。

 ただ、日本一のズルい女なので、五輪開催が難しくなったと判断した場合、真っ先に「中止」を宣言するだろう。東京五輪を喜んでいるのは田舎者ばかりで、東京新聞の都民アンケートで中止が6割を占めたように、都民の大半は開催に反対だからだ。(大体、五輪を推進してきた人間に東京出身者は少ない。石原元知事は神奈川出身、猪瀬元知事は長野出身、舛添元知事は九州出身、小池知事は兵庫出身だ。)

 最後に⑤の大会運営の行き詰まりだ。野球、陸上、バドミントンなどで最終選考会のトラブルが報じられている。本番が始まれば、辞退するボランティアも一層増えるだろう。ボランティアにはワクチン接種を行う保障がないし、猛暑も予想されるからだ。巨大化した五輪では、多数のボランティアがいないと大会が成立しない。ボランティアである以上、参加は強制できない。ボランティア100人が必要な会場に、当日、体調不良などを理由に、数十人しか来ないということも起きるだろう。

 組織委はボランティアの穴埋めに、時給数千円でバイトを募集している。コロナ下で生活苦にあえぐ人たちが仕方なく応募し、炎天下で酷使されるだろう。IOCやスポーツ団体の役員、スポンサーやその枠の入場券をもらった人が、冷房付きの特等席で貴族さながらに競技を観戦する中、ボランティアはこき使われるという「貴族と奴隷」の五輪が展開される。間違いなく、ボランティアの中から熱中症での死者が出るだろう。

 あまり知られていないが、バブルの余韻が残る1997年の長野五輪も運営はお粗末だった。送迎バスが渋滞し、試合開始までに間に合わなかったり、帰るのに長時間を要したりした。これはひとえに、当時の長野県職員を中心とする組織委の官僚的運営が主な要因だった。

 今回、安倍、菅政権下で、国力や役人・民間人のモラルが低下している中で、大会が開かれる。組織委には1万人が必要なところ、1年延期の影響で人件費が削減され、4千人しかいないという。これから、宿泊、輸送、食事、トイレ、休憩所など、ありとあらゆるところでトラブルが頻発し、開催期間中には解決されないだろう。もともと、安倍晋三の「アンダーコントロール」の嘘から始まり、裏金で買ったスジの悪いイベントである。関わらないほうが身のためだ。(2021年6月11日)無断使用、盗用、転載を禁じる。