北大輝「明日への戦い」

日本社会への提言

熱海の土石流の原因は産廃の不法投棄だ…単なる「盛り土」ではない理由

 熱海の土石流の原因が、最初に土地を所有していた業者による「盛り土」が原因だと、新聞、テレビなどで報道されている。間違いではないのだが、正確さに欠ける。土石流を起こした、あの谷に埋められていたのは、多分、不法投棄の産業廃棄物だ。

 産廃問題がクローズアップされたのは、バブル期の1980年代後半からだ。好景気による工業製品の大量生産に伴うプラスチックや金属類などの廃棄物、不要になった車や家電製品などの粗大ゴミ、都市再開発で壊されたビルや建物など膨大な建築廃材などを、地方の山間部などに違法に投棄する問題が続発したからだ。重金属や化学物質など有害物質を含み、ともかく膨大な量の産業廃棄物を正規の手続きを取って処理すると、多額の費用がかかる。ゴミ処理に金をかけたくないメーカーやゼネコンなどは、業者に産廃の処分を任せるが、結局、下請け、孫請けに回された産廃は、周辺住民の目に付きにくい所にダンプカーで運ばれて、どんどん捨てられていった。

 ここがポイントなのだが、悪質業者が狙う投棄場所は、山間地の谷や河川の旧水路などだ。くぼんだ所を埋め立てるので、大量の産業廃棄物を捨てることができるし、平地に小山状に積み上げるよりも、住民の目につかない。後で問題になっても、掘り返して調査することは難しい。不法投棄にはもってこいの場所だ。

 「盛り土」を名目に、県に届出をしたというのも、不法投棄の定番のやり方だ。「土地改良」「土地造成」などを名目に、残土にありとあらゆる産業廃棄物を混ぜ込んで捨てるのが、悪質業者のやり口だからだ。かつて、「土地改良」を名目に、下水処理場の汚泥を捨てた現場に、生理用品やコンドームが散乱していたケースもあった。最近の報道では、盛り土をしていた会社の社員から「建物を解体した時の産業廃棄物を捨てていた」という証言が出てきた。現場に、プラスチックの破片、木くず、タイヤなどがあったという話も出ている。

 国の法律では、一貫して産廃業者に対する規制が甘い。1980年代から、日本各地で周辺住民すら知らないような不法投棄が行われてきた。大雨や地震が引き金となって、また土石流や土砂崩れが起きるかもしれない。日本中至る所に、「時限爆弾」が仕掛けられているようなものだ。熱海の土石流が起きてから、1週間。まだ、行方不明の人がいるし、復旧作業も膨大な土砂に阻まれ、遅々として進まない。国の怠慢のツケを負うのは、いつも、名もなき庶民だ。(2021年7月12日)無断使用、盗用、転載を禁じる。