北大輝「明日への戦い」

日本社会への提言

アナウンサーや芸人を政治家にしてはいけない

 いわゆる「女子アナ」という人物が関係するプロジェクトに関わったことがある。最初は本人も乗り気で順調に進んでいたのだが、最後の最後の段階で、自分の思う通りにしないと、「降りる」と言い出した。メンバーは全員青くなった。関係者など全ての了承はとっているし、このプロジェクトのスタート日時も決まっている。これが無くなってしまったら、大きな穴が空くどころの騒ぎではない。

 もちろん、彼女もど素人ではなく、それなりの経験を経ている人なので、こちらの業界のやり方も知っている。自分のわがままを通したい、というのは、言わなくても分かった。

 こちらも担当者の一人として、ただ引き下がるのはシャクだったので、泣き落としの演技をしてみた。「私の顔をつぶす気ですか? これをひっくり返されたら、上司から『お前は無能だ』とバッテン付けられて、昇進コースから外されて、窓際に回されてしまいます。何とか、前のプランでお願いできませんか?」と声を震わせ、泣き声混じりに訴えてみた。

 すると、彼女はヌケヌケとこう言い放った。「あーら、それなら、わたくしがあなたの上司にお電話して、あなたの顔も潰さないように、上司の方も満足するように、きれーいに説得して差し上げますわ」。

 あの時以来、女子アナという人種を信用しなくなった。なぜ、女子アナや元女子アナがあんなに偉そうにしているのか、不思議だったが、「舌先三寸でどんな人間でも言いくるめられる」と思っている驕りがあるからだろう。

 

 小池百合子都知事は、東京12チャンネルの経済番組の女子アナの時、出世の糸口を得た。丸川五輪相も「東大卒」が売りだったテレ朝の元女子アナだ。二人とも、目立つことは人一倍大好きだが、テキトーで無責任な発言の数々で、物事をきちんと分かってる人たちから厳しい非難を浴びている。

 小池都知事は、知事選前には都の税金を使ったコロナ啓発CMに出まくって「やってる感」を出すのに精を出し、記者会見ではテレビでよく使われるフリップを多用し、「3密」だの「5つの小」だの「コロナかるた」だの、3日で忘れるキャッチフレーズを次々にタレ流していた。東京五輪の開催前、コロナの増加傾向にもかかわらず、政府が五輪を強行しようとする姿勢に対し、世論調査で都民の5〜6割が開催に反対するほど五輪が不人気になると、安倍前首相と同じように存在感をすっかり消してしまった。都内のコロナウイルス感染者が3000人を超えることが分かった日は早帰りして、コメントも出さず、翌日も記者会見をせず、質問一問に適当に答えただけだった。

 丸川五輪相も「ワクチン1回目の接種で、まず『1次的な免疫』をつけていただく」という非科学的な発言で、医学者や研究者の批判を浴びた。小山田圭吾の「いじめ問題」では、自分に責任が及びそうになると、「報道を確認していない」「組織委に確認してほしい」という責任転嫁発言を連発していた。

 

 ツイッターなどが普及する前、今から20年ほど前まで、テレビの中で問題発言をしても、よほどのことでなければ、その場で取り繕うか、後で謝罪すれば、致命傷になることはなかった。個人が発言時の映像を保存し、世間に拡散する方法がなかったからだ。小池にせよ、丸川にせよ、その場しのぎの舌先三寸で世の中を渡って来られた「古き良き」時代の、世間を舐めて生きてこられた人種である。もちろん、女子アナであるから、社内や社外の、特に政財界のオジさん連中からの「○○ちゃん、かわいいね」「僕は○○ちゃんのファンでね」といった圧倒的な人気という強みも兼ね備えている。「老人支配」の日本社会においては、非常に大きな武器である。

 

 これに似た立場で、「元男性アナウンサー」という政治家もいる。元フジテレビのアナウンサー、神奈川県の黒岩知事などだ。女子アナの劣化版みたいなものだ。「菅首相の傀儡」とも言われる黒岩知事の軽い発言については、ネットで探せば、簡単に見つかるので、暇な時にでもやってみてほしい。NHKの元男性アナで和田政宗とかいうネトウヨ参院議員もいるようだが、こういうのはどうでもいい。

 

 アナウンサーについて、世間の人が完全に誤解しているのは、彼らは単純に、良い声を持ち、正しい発音とイントネーションで放送原稿が正確に読めるだけの単なる「トーキングマシーン」に過ぎないことだ。だから、現場での取材経験や深い教養には乏しい。「バイリンガル」姉ちゃんもいるが、外国の政財界の大物や知識人相手に、該博な知識やデータに基づいたインタビューをするのは無理だろう。彼らはよく「キャスター」や「アンカーマン」という肩書を使いたがるが、海外のニュース番組に登場する本物とは比較対象にもならない。CNNやCBSなどのアンカーパーソンは様々な現場で取材をこなしてきた海千山千の連中であって、日本のニュース番組に本物の「キャスター」や「アンカーマン」はほぼいないと言っていい。(ちなみに、今度、NHKからテレ朝のニュースステーションのキャスターになる大越さんの取材は「かなり雑」と言っていい)

 NHKであれほど高い評価を得ていた有働由美子アナウンサーが鳴り物入りで日テレのニュース司会者になったが、NHK時代が嘘のように精彩を欠いているが、これは当たり前のことだ。高学歴・高偏差値の記者揃いで、中央官庁の取材や番組制作には惜しげも無く物量戦で挑むNHKの取材陣・製作陣のバックアップあってこその「有働さん」で、取材も制作もほぼ下請け任せ、安上がりの民放に行って、メッキが剥がれただけのことだ。

 

 アナウンサーより口が達者な芸人なら、もっとタチが悪い。「舌先三寸」でごまかすのが

日々の仕事なのだから。「報道の中立性」も関係ないし、瞬時に権力や金に有利な方に(視聴者が分からないように)味方する。ダウンタウンの松本が、なぜいつも自信満々な態度なのか不思議に思っていたが、「どんな相手、どんな場面でも舌先三寸で言いくるめられる」という自信があるからだろう。吉本芸人が、安倍晋三や維新の政治家にすり寄るのが批判されたが、「旦那」にゴマをする芸人としての本性なのだから仕方がない。首相時代の安倍晋三が主催した「桜を見る会」に、様々なタレントが大挙して参加していたのも、同じ構図だ。

 

 この分野で最悪の芸人は橋下徹だ。本人は「弁護士」を自称するが、所属事務所は爆笑問題と同じ「タイタン」だし、行動パターンは完全に「芸人」だ。テレビに出始めた時のキャッチフレーズは「茶髪の弁護士」という色物扱いだった。法律的知識(法律の正しい知識ではなく、あくまで法律的に見える知識だ)と、法廷で学んだ強引な屁理屈論法や論点ずらしを駆使して、自民党だの財界だのにスリスリする。

 意外と知られていないのだが、橋下も今の大阪府知事の吉村洋文も、サラ金商工ローンがグレーゾーンの高金利や強引で悪辣な取り立てで社会問題になっていた時代に、それらの顧問弁護士をしていたことだ。橋下は商工ローン「シティズ」(アイフルの子会社)の顧問弁護士、吉村はサラ金武富士の顧問弁護士だった。

 橋下は当時、毎年500〜700人程度しか司法試験に合格せず、一人前の弁護士になれば、若手でも年収1000万円から2000万円を得られた時代に、もっと金が欲しくて、商工ローンの顧問弁護士をしていた。弁護士になってから、母校に招かれて講演した時に、外車(フェラーリ?)で乗り付け、「君たちも努力すれば、こういう車に乗れるようになる」と言った、という真贋不明の逸話があるが、本当なら、違法スレスレの高利貸しのために働いたことでの高収入だったということだろう。

 

 8月8日の東京オリンピックの閉会式、小池はバカ高い着物を着て、五輪旗を振った。元「女子アナ」の性として、世界中に中継されて歴史に残るこの一瞬のために、五輪を強行してきたのだろう。リオ五輪の閉会式の時と違い、観客が一人もおらず、盛り上がりには欠けたが、本人はとても満足そうだった。小池は菅とともに、IOCから最高勲章を授与されるという。自分の栄光や選挙のために、コロナに感染する都民、国民の命を犠牲にして得られる勲章だ。「売国奴」という表現がぴったりではないだろうか。(2021年8月9日)無断使用、盗用、転載を禁じる。