北大輝「明日への戦い」

日本社会への提言

極右独裁政治家・安倍晋三の死に、庶民は万歳を叫んではいけないのか?

 約10年間、日本の政治史に残る暗愚の総理大臣として、憲法違反、法令無視、モラル逸脱のやりたい放題の政治をやってきた安倍晋三が、統一教会二世でネトウヨだった元海上自衛隊員の山上容疑者に手製の銃で暗殺された。

 祖父の岸信介統一教会の日本進出や、その分身の国際勝共連合の誕生に深く関与し、父の安倍晋太郎統一教会と深く関わりを持ち、晋三自らも統一教会の主張に沿う夫婦別姓反対や同性婚反対、憲法改正を唱えてきた極右政治家だった。その関わりから、統一協会に家庭や自分の人生を破壊された無職の男に、「最も影響力のある統一教会のシンパの政治家」として、銃殺されるという、まさに「因果応報」「天罰」と言っても、差し支えのない無様な最期を遂げた。

 「アベスガ」政権から現在の岸田政権までの間に、消費税が5%から10%に倍に上がり、コロナ下でも市民一人あたり、たった10万円しかもらえず(米国は約35万円配布、欧州では給与の一定割合の補償)、円安による物価高にも苦しんでいる庶民から見れば、財界やお金持ち優遇の政治を約10年も続け、政権を投げ出してからも、意地汚く存在感を出そうとしていたバカがいなくなったのだから、快哉を叫びたいところだ。

 ところが、「進歩派」とみられる学者、評論家、論客たちは、安倍晋三が暗殺された途端、ネット上に「因果応報」「天罰」などの言葉が出てくるようになると「そんな言葉は使うな」とか、「民主主義の危機だ」と強く批判するようになった。

 

 はあ? おかしいのではないか。日本の民主主義を壊しまくってきた安倍晋三の死が、なぜ「民主主義の危機」になるのか?

 独裁国家において、独裁政治が終わるきっかけの一つは暗殺である。韓国で軍事クーデターを起こして、独裁政権を樹立し、民主派を徹底的に弾圧した朴正煕は、腹心の金載圭KCIA長官に銃殺され、彼の「維新体制」は終わりを告げた。もう一つのきっかけは革命だが、日本では期待薄だろう。

 自民、公明の連立与党に、擦り寄ってくる日本維新の会なども加えて、国会を押さえ、行政、裁判所、マスコミ、ネット空間(文字通りネトウヨがいっぱいいる)をも掌握した安倍晋三は、その思想からも極右独裁者と言ってもよい存在だった。政権を投げ出したのは、コロナ対策で批判が高まって、責任を取らされそうになったからだ。首相を退いても、派閥会長に就任し、「防衛費をGDP2%に増額」「核武装論議解禁」などと暴走を続けた。安倍晋三は享年67歳。山上容疑者に暗殺されていなければ、日本の政治に今後も甚大な悪影響を及ぼし、日本社会をより一層劣化させていたことだろう。

 明治、大正期の長州軍閥を代表する保守藩閥政治家の山県有朋が亡くなった時、当時、東洋経済新報社記者だった石橋湛山コラムで、「死もまた社会奉仕」と書いているが、安倍晋三の死も同じ性格を持つのではないか。銃による暗殺なので、言いにくい面もあるだろうが、政治学者や政治評論家、社会学者は日本の民主主義を破壊し続けてきた政治家が倒れたことによるプラス効果を、もっと真剣に吟味するべきではないだろうか? 例えば、戦時中の東條英機の悪行を正しく評価するように。

 一方で、ある知識人による「このような暗殺を認めると、市民派、進歩派の政治家などが、保守派以上に暗殺されるようになる」という趣旨の投稿を見た。しかし、例えば、共産党の委員長や立憲民主党の党首が暗殺されたとして、自民党公明党日本維新の会などの連中が、安倍晋三が死んだ時のように、哀悼の意を示すとは思えない。多分、麻生太郎あたりが中心となって、「共産党だから刺されるんだ」「自分たちの政治主張に問題があるからだ」「襲撃されるのは、それなりの理由があるはずだ」などの罵詈雑言を並べ立てるはずだ。政治的に対抗する勢力の政治家には、まっとうな哀悼の意を示さないことが分かっている極右政党・自民党の元総裁が殺されたからと言って、庶民が哀悼の意を表する必要はさらさらないだろう。

 

 安倍晋三が死んだことによるメリットの一つは、カルト宗教団体・統一教会自民党のズブズブの関係が明らかになったことだ。自民党の政治家は「知らなかった」「名前を貸しただけ」などと安倍晋三同様、嘘をつきまくっているが、40歳以上の政治家なら、統一教会霊感商法合同結婚式が、テレビ、新聞、雑誌のニュースやワイドショーなどで連日報道されていたことを知っているはずだし、本当に知らないなら、バカすぎて、政治家も務まらないはずだ。

 もう一つは東京五輪汚職など、安倍政権下での悪事が暴かれつつあることだ。今まで、安倍晋三の存在によって、蓋をされてきた数多くの悪事に、少しでもメスが入るのを期待したいものだ。(今の検察では期待薄だが)

 安倍晋三を長期政権たらしめたのは、消費税10%を実現したかった財務省原発をもっと再稼動させたかった経産省自衛隊を海外派兵して日本の存在感を高めたいと目論んでいた外務省や防衛省警察国家を強化したかった警察庁などの官僚群だった。安倍政権が国会での強行採決など力づくで実行してきたこと、つまり、憲法9条の解釈変更による集団的自衛権の行使容認や、共謀罪特定秘密保護法の成立などを見れば、不正まみれの安倍政権を何が何でも支え続けた官僚たちの思惑が分かる。 

 その官僚たちの希望に忠実に従った報酬として、霞が関の官僚たちは、森友・加計・桜を見る会など、数々の汚職や利益供与、有権者の買収行為などを見逃し、隠蔽し続けた。財務省職員の赤木さんを殺したのは、安倍晋三だと言っても過言ではない。

 例えば、外務省からのご褒美は、「地球俯瞰外交」を名目に、国会を開かず、昭恵夫人と共に「外遊」という名の世界観光旅行を楽しんだことだ。訪問国数は80の国と地域、延べ訪問国数は172の国と地域。移動距離は155万キロ、地球38周分に相当する。外遊時に訪問国にバラまいた対外援助額(国の税金)は2018年1月までで54兆円。これだけ派手にバラまけば、宗教カルトに撃ち殺された人間であっても、各国の指導者はお金をもらったお礼に、丁重なお悔やみを言ってくれる。それを「安倍さんが国際的政治家だと高く評価されている」と賞賛するのは、バカなネトウヨだけでいい。

 

 岸田首相は、安倍晋三が死んでまだ間もないうちに、安倍晋三の「国葬」を決めた。庶民感情から言えば、「モリ・カケ・桜」の不祥事まみれで、拉致被害者北方領土も帰ってこず、経済も悪化させた政治家の国葬など、ありえない話だが、岸田は安倍同様「1日でも長く総理をやりたい」だけの低脳3世政治家なので、うるさい保守派を黙らせるために国葬を持ち出したのだろう。

 極右の政治家や評論家が安倍晋三国葬を叫ぶのは、現天皇を葬儀に引っ張り出すためだろう。「日本は神の国」と言いたい時代錯誤の政治家が、公式に「天皇陛下万歳」を叫べる機会が与えられる。自民党葬ならともかく、国葬ともなれば、天皇自身がいくら嫌でも出席せざるをえないだろう。多分、国論を二分した東京五輪の開会式のように、雅子は出席しないだろう。現天皇が本当に嫌なら、秋篠宮を代理に立てるかもしれない。国葬のもう一つの狙いは、安倍晋三を「偉大なる宰相」に神格化するためだろう。最後の国葬吉田茂だが、在任中は米国に追随するだけの政策しか行わず、「ワンマン」と評判の悪かった吉田茂が、今では一部の保守系政治評論家に「戦後の平和日本の基礎を築いた大宰相」扱いされている。二匹目のドジョウを狙いたくなるのも理解できる。

 けれど、国葬まであと2か月。統一教会が日本最大級のカルト宗教団体となり、数多くの被害者を生み出す原動力となったのが、「岸・安倍三代」であることが日本国民に周知されるには、十分な時間がある。選挙時に統一教会の票の割り振りは「安倍晋三自身が差配していた」との証言も出てきた。国葬は岸田政権の支持率低下を招き、短命政権の引き金になるかもしれない。

 国葬は反対デモと「国賓の警備」を理由に膨大な機動隊が出動する異様なものになるだろう。お坊ちゃん育ちながら、非常に執念深く、頭はとても悪いが、口先と嘘だけは達者で、政治家としては致命的な後継ぎがいないという異形の政治家の最期にふさわしい葬儀だろう。

 安倍晋三国葬はぜひ統一教会日本会議神社本庁によるカルト合同葬にしてほしい。そして、最後は統一教会らしく「万歳(マンセー)」の叫び声で故人を送ろうではないか。